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読書好きおじさんの小説紹介的雑文集

「文学」というジャンル小説〜『ニッポンの文学』佐々木敦

文庫版の小説の巻末には、その小説の解説というものがある。僕の好みの小説の、その解説を書いている人の中に佐々木敦さんの名を何度か見かけた。 文学に限らず、映画や音楽に関しても評論活動を行なっている方で、この『ニッポンの文学』に連なる著書に、『…

無理はしない2019。

年が明けた。 年を越したって特に何も変わらないんだけど、なんとなく周りに流されて、目標みたいなものをたててみようか、などと考える。 年明け前に漠然と考えていたのは、2019年は『遊び』の一年にしたいな、ということだった。遊びというか遊ぶというか…

『レプリカたちの夜』一條次郎

出会ってしまったなこりゃ。今年最後の最後に。平成最後の年末に。 全然存じ上げておりませんでした。一條次郎さん。本屋さんでウロウロ物色してたら、目に入ってきた帯。伊坂幸太郎さんによる一文。それを見た瞬間、即座に手に取った。 なんて書いてあるか…

『あなたが消えた夜に』中村文則

なんていうのか、大好きな作家さんというわけではないんだけど、時折ふと読みたくなるのが、この方の作品。 読みたくなるんだけどね、読み始めるのには少しの気合と大きな覚悟が必要で、後回しにしがち。というのも、初めて読んだ『遮光』のインパクトが強す…

『火星に住むつもりかい?』伊坂幸太郎

まあ、とりあえず地球でいいかな。 こないだ読んだ『ゴールデンスランバー』でも言及(と言うほどでもないか)されていたね、ジョージ・オーウェルの『1984年』。この『火星に住むつもりかい?』という小説も、そういった類のいわゆるディストピア小説。 特定…

『ゴールデンスランバー』伊坂幸太郎

特にきっかけはないんだけど、久々に伊坂さん読みたいな、とふと思って未読のものをピポパっ(レジスターの音)と数冊購入。 そういえばいつ以来だろ?なんて自分のブログを掘り掘りしたら、今年はじめに読んでいた。ほぼ一年ぶりだなぁ、なんて、その自分のブ…

『ユービック』フィリップ・K・ディック

なんだかんだ言って、ディックしか読んでいない近頃。そもそも読むペースもだいぶ遅くなっていて、月に1.2冊くらいしか読んでいない。 にしてもこうやって、浮気せずに1冊ずつ読むなんて、乱読派の僕としては珍しいな、と自己分析。 さておき、ディック3冊目…

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』フィリップ・K・ディック

あなたはアンドロイドではないですか?本当に人間ですか? てことで引き続きディック。映画『ブレードランナー』の原作なり。 去年(2017年)あたり『ブレードランナー2049』っていう続編が公開されたらしいけども、どちらも観てない。 原作を先に読んじゃうと…

『高い城の男』フィリップ・K・ディック

あんだけSFは敬遠してたんだけどな。苦手意識があって。でも最近はSF小説ばかり読んでいる。そんなもん。ということで、巨匠ディック。初ディックなり。 まあ読みやすい。第二次世界大戦で、連合国側ではなく枢軸国側が勝利した世界を描いていて、その辺を自…

『1984年』ジョージ・オーウェル

なかなか仕事が忙しく、ゆっくり小説を読む時間がなかったんだけど、毎日チビチビと10数ページずつ読んで、読了。 ジョージ・オーウェルの『1984年』。 出張先なので、コインランドリーで洗濯しつつ待ち時間にブログ書く。 しかし、3週間くらいかけて読んだ…

『華氏451度』レイ・ブラッドベリ

この小説を、彼らに燃やされてしまう前に読むべし。 本を所持しているのがバレると、昇火士に燃やされてしまう。「焚書(ふんしょ)」というやつ。どういう本、ということではなく、全ての本。 読書が好きな人たちにしてみたら、地獄のような世界。この『華氏4…

『スローターハウス5』カート・ヴォネガット・ジュニア

戦争では簡単に人が死ぬ。そういうものだ。 そういうものだ、なんていう言葉で片付けられることではないんだけども、実際に戦争を体験し、見てきたヴォネガットにそう言われたら、正直何も言えん。残念だけども、想像力は体験を超えることはできないのだ。 …

『私の恋人』上田岳弘

あなた方人類は、うだうだ言わず黙ってこの小説を読むべし。 とか言って、紛れもなく僕も人類であって、そうである以上、人類の歴史は知っておく必要があるのかもしれない。まあ、知らなくても生きていけるけども、知っておけばもう少し真っ当な生き方ができ…

『ぼくは落ち着きがない』長嶋有

これぞ「純文学」と言いたい。 まあ、文学とはなんぞやなんてのは、よくわかってはいないし、そもそも区別する必要もないのかもしれないけども。 でも、僕の頭の中では(他の人にとってはどうかは知らない)これこそが「純文学」であると認識された。というか…

『クエーサーと13番目の柱』阿部和重

特に意味はないのだけど、近頃は阿部和重さんと川上未映子さん夫婦の小説ばかり読んでいる。どちらの小説も好きだ。 二人とも、既成の概念だったり、世界で起こっている出来事を、とにかく疑う、というところが根底にあって、そこらへんが共通している気がす…

『あこがれ』川上未映子

小学生って、なんだかくだらないんだけど面白いあだ名をつけるのが上手。ヘガティーって、そのまんまなんだけど、絶妙なセンス。 ヘガティーっていうのは、川上未映子さんの小説『あこがれ』の中の主人公の一人。まあ、つまり考えたのは川上さんなんだけども…

『すべて真夜中の恋人たち』川上未映子

川上未映子さんの小説って、いつも賛否両論が激しい気がする。僕は好きなんだけども、嫌いだという人も結構多い。 でも、そもそも賛否両論が激しいということは、それだけ読む価値があるという証拠だし、皆んなが良いという小説など、この世界にはそれほど必…

『トライアングルズ』阿部和重

阿部和重さんの短編集『無情の世界』に収録。狂気と正気って紙一重だと思うんだけども、そのギリギリのところには、ある意味で滑稽さも漂うのだな、というような事をこの小説を読んで考えた。 阿部和重さんの短編『トライアングルズ』には、まさにその狂気と…

『幻影の書』ポールオースター

『幻影の書』の主人公ジンマーは、絶望の中、ヘクター・マンという喜劇俳優の短編映画に偶然(偶然というのが大事な要素ね)出会う。そして生きていく目的を見いだす。 僕は特に人生に絶望するほどの体験はしたことがないけれども(記憶から消してしまっただけ…

『ムーンパレス』ポールオースター

ポールオースターといえばコレ。という人が結構多い気がする。 ポールオースターの作品の中で、僕が最初に読んだのは『幽霊たち』で、その不思議な世界に戸惑いながらも読了し、他も読んでみようと手に取ったのが、この『ムーンパレス』だったと思う。(少し…

『バルセロナの印象』長嶋有

旅行に行くのは結構好き。でも、行きたいなあと思う場所はたくさんあっても、いわゆる時間とかお金とかいうやつの問題があってなかなか難しい。 まあそうは言っても、家族旅行だとか新婚旅行だとか、それなりに行ってはいるわけで、多少は思い出というものも…

『猛スピードで母は』長嶋有

方言、というものがある。僕の住む岩手県にも、勿論それはあって、周囲の人たちは当然のように、いわゆる「標準語」ではない表現を使う。 まあ、標準なんていうのは誰かが勝手に決めたものであって、そうでない言葉を話す僕らにとっての標準は、「方言」のほ…

『眠れる美女』川端康成

仕事中にふと窓の外を見たら、目の前の公園のベンチに、お爺ちゃんとお婆ちゃんが座っていた。二人がけのベンチが二つ、それぞれに座っていて、その夫婦の微妙な距離感がなんとも微笑ましかった。 と、二人が夫婦だと勝手に決めつけたけれど、もしかしたらた…

『かけら』青山七恵

いきなりだけれど、僕にもいとこがいる。最近会ったのはいつだったか。何年かに一度、というくらいの頻度でしか会うことがないので、その度いとこの変化に驚き、何を話していいのか分からず、うろたえる。 そして、また数年間会うことがなく、次会うときもき…

『オテルモル』栗田有起

夢をよく見る人とそうでない人がいるけれども、どう違うのだろうか。僕はあまり見ない。妻はよく見るようで、起きがけに、見た夢の話をすることも少なくない。 あまり見ない僕からすると、何でそこまで覚えているんだろう、ってちょっと訝しんだりもする。結…

『ハミザベス』栗田有起

知らなかったです。栗田有起さん。で。先日古本屋さんで、面白いタイトルだなと思って何気なく手に取った小説が『ハミザベス』だったわけでして。読んでみたら、これがまたすごく良かった。気付いたら読み終わってる、っていうような勢いのある小説で、溢れ…

『佐渡の三人』長嶋有

身内の死というのは、とても悲しい。そして、この「悲しい」という感情を描いた物語というものは、世の中に沢山ある。ちょっとあり過ぎなくらい。今回読んだ長嶋有さんの『佐渡の三人』という小説も、身内の死を取り扱ってはいるけれども、その「悲しい」と…

『問いのない答え』長嶋有

★★★★☆ 何でこんなの書けるんだろね。やっぱ長嶋有さんは天才だ。いや、さすがにそれは言い過ぎか。そう。そうなんだよ。この「過ぎた」が良くないということなんだよね。そして、「過ぎない」小説を書けるのが、長嶋有さんなんじゃないか、と思う。 きっと、…

『雪沼とその周辺』堀江敏幸

★★★★★ とても良かった。堀江敏幸さんの短編集、『雪沼とその周辺』。川端賞、谷崎賞受賞作。 この小説には7つの短編が収められている。それぞれ独立した話だけども、タイトルからもわかる通り、全ての短編の舞台が「雪沼」という地とその周辺で、登場人物だ…

『ミステリアスセッティング』阿部和重

★★★★★ 以前に、阿部和重さんと伊坂幸太郎さんの共作『キャプテンサンダーボルト』を読んで、かなり面白かったとブログに書いた。 その時点では、阿部和重さんの小説は読んだことがなかったので、早速本屋でデビュー作の『アメリカの夜』を見つけて購入し、読…