NOVELIFE

読了した小説のささやかな記録。

『オリンピックの身代金』奥田英朗


吉川英治文学賞受賞作


これは、かなり読みごたえがあった。

あらすじ

昭和39年東京。オリンピック開催を間近に控え、日本中が浮つく。そんな中、1人の静かなテロリストがダイナマイトを手に、オリンピックを人質に身代金を国に要求する。はたしてオリンピックは無事開催されるのか。否か。


田舎。


そう。これは田舎と都会の格差の話。オリンピック開催を陰で支えた、地方からの出稼ぎ労働者たちに日を当てた小説。読むと、この時代の地方と東京の格差を感じる事が出来る。


今では何処にいても、情報を発信する側になる事ができるし、あまりそのような差を感じることはないけど、とは言えやっぱり日本の中心は東京。これは揺るがない気がする。地方に住む人間として、なんとなく嫉妬心はある。


でも、特に不自由する事なく生かせてもらっているし、多少は不満はあるにしろ、声を荒げるほどでは全くない。


もし、自分がこの時代に生きていたらどうだったのだろうか?地方に住んでいて、勉強が出来るわけでもないとなると、やはり地元で地味に畑仕事をするか、出稼ぎ労働者となるか。


それでもいいのかもしれないけど、この小説で描かれているように、地方に生きる人々の実情など知らない東京の人達の心や、出稼ぎ労働者に対する資本家階級の人間たちの考え方というものを見せつけられると、なんだかなあと思う。


まあ、今でも変わってないところではあるけど。でもやっぱりこの時代はもっと酷かったんだろうなあ、と考えさせられた。

さすがの精密描写

この小説で描かれている昭和30年代は、僕の親の世代が産まれたばかりの頃で、勿論僕自身は生きていない時代なので想像するしかない。


経験していない時代を、文章だけから読み取るのは、なかなか骨が折れる。と思いきや、この小説『オリンピックの身代金』は違う。やっぱり奥田英朗さんはすごい。しつこいくらいディテールにこだわって、ギュウギュウに詰め込んでくる。なんかけなしてるみたいだけど、違う。笑


奥田さんの書く小説は、心情にしろ情景にしろ、描写がとにかく細やかでジワジワと読み手の身体に染み込んでくる。そして気がつくと、その小説の中の世界へ入り込んでしまっている。


この『オリンピックの身代金』も例に漏れずで、自分が経験していないはずのその時代に、自然に連れていってくれる。


さすがのお仕事。素晴らしい。

あの終わり方

読後感を書いてしまうと、ネタバレになってしまうような気がするので書かないけど、僕はあの終わり方で良かったと思う。


終わり方に納得していない、というような感想を抱いている人も結構いるみたいだけど、僕はいいと思うなー。


君はどう思う?


うんうん。え?実は読んでないって!?


じゃあ、是非読んでみてよ。オススメだよ。