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読書好きおじさんの小説紹介的雑文集

『タマリンドの木』池澤夏樹


★★★☆☆


池澤夏樹さんの小説は、初めて読んだ。芥川賞をとった『スティルライフ』が有名なところかと思うんだけど、たまたま見つけたこの『タマリンドの木』をパラパラ立ち読みしてたら、僕の住む街、岩手県盛岡の文字が。おっ、と思ってそのままレジへ。動機なんてそんなもん。


あと、これは直接動機には関係ないけど、著者の池澤夏樹さんは埼玉大学理工学部中退で、僕も大学は違うけど、工学部中退。勝手に親近感というか安心感を抱いた。笑。まあ、その後は雲泥の差だけども。


そんなことはさて置き、理工学部というだけあって、論理的で端正な文章だなあ、という印象をまず抱いた。とても読みやすい。そして主人公の男もやはり抑制的で論理的思考の持ち主。そんな彼の恋愛物語が、この『タマリンドの木』


仕事と私、どっちが大事なの?ってのは女性の台詞だという気がするけど、この小説では、逆の立場という感じ。主人公は日本の企業に勤め、日本で暮らしている。その主人公が心惹かれた女性は、カンボジアの難民キャンプの幼稚園で働いている。彼女も主人公に心惹かれているけど、今働いている場所が自分の居場所だと確信していて、日本に帰る気は無い。


主人公は会社を辞めて、今の生活を捨て、彼女の元へ行くのか。迷う。


その心の葛藤が伝わってきて、読んでいて苦しかった。うがー!ってなりそうだけど、それを抑えて、あくまでも冷静に考えようとする主人公がなんとなく自分と重なって感情移入してしまった。とにかく心情描写が丁寧だね。


って、ここまで書いてて思う。なんだか真面目でつまらない感想。笑。んー、多分整い過ぎなんだな、この小説。なんて、感想を書けないのを小説のせいにする。でも実際そう。主人公が理詰めで動くタイプで、そこから全然はずれないもんだからさ。全体的にも、キレイに収まりましたっていう雰囲気は感じた。


結局何言ってるかわかんない感じになったけど、つまり、この『タマリンドの木』という小説は、文体もストーリーも綺麗に整っていて読みやすいよ、ということ。いい小説というより、悪くない小説という感じ。


すごくオススメというわけではないけど、いわゆる理系的な思考の人で、読んだことないけど、たまには小説でも、なんて思ってる人にはちょうどいいかも。


あ、あとこの小説を読んでいて、あまりにも自分はベトナム戦争について知らないなと感じたので、少し勉強している。