novelife

読書好きおじさんの小説紹介的雑文集

『猛スピードで母は』長嶋有


方言、というものがある。僕の住む岩手県にも、勿論それはあって、周囲の人たちは当然のように、いわゆる「標準語」ではない表現を使う。


まあ、標準なんていうのは誰かが勝手に決めたものであって、そうでない言葉を話す僕らにとっての標準は、「方言」のほうだ。どっちでもいいんだけども。


でも、まだ狭い世界で生きている子供にとっては、やはり親の話す言葉が標準語だと思う。別に違和は感じていない(いなかった)はず。


その自分の話す方言が、どうやら標準語ではないらしいと気付く瞬間が、成長していく中でやはり何度かあって(今の時代は少ないかもしれない)、その瞬間の気持ちを、長嶋有さんの『猛スピードで母は』という小説の中で思い出させてくれた場面があった。

いきなり炊かずにしばらく置いておくことを「米をうるかす」といった。「うるかす」という言葉が標準語でないと知ったとき、慎はずいぶんうろたえた。自分の過ごしたある時間をまるごと否定された気がしたのだ。(引用)


ああ、よく分かるなあと。気付いた後は、とても意識的になってしまって、その言葉を使わなくなっていったのを覚えている。子供は敏感。大人は鈍感。と、一概には言えませんが。


というか、岩手でも「うるかす」という表現をするけども、これ、標準語では何というのだろう。と、疑問を抱くも、別に調べるわけでもなく放っておく。


それにしても、長嶋有さんの小説は、別に最初から読まなくてもいいんじゃないだろうか、なんて感じたりもする。かゆいところに手が届くような場面の描写が随所にあって、それだけで楽しめたりもする。


無二ですね。この才能は。