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読書好きおじさんの小説紹介的雑文集

『ムーンパレス』ポールオースター

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ポールオースターといえばコレ。という人が結構多い気がする。



ポールオースターの作品の中で、僕が最初に読んだのは『幽霊たち』で、その不思議な世界に戸惑いながらも読了し、他も読んでみようと手に取ったのが、この『ムーンパレス』だったと思う。(少し曖昧な記憶。『偶然の音楽』だったかも)


でも、読み始めたものの、その時は途中で投げ出してしまった。別に、この小説が読みづらいとかつまらないとかそういうことではなく、たまたま気分に合わなかっただけだと思う。やはり小説は読むタイミングが重要なのだ。


ということで、結構長い間ほったらかしにされていた『ムーンパレス』。今回はバッチリはまって一気に読了。いやはや、こんなに素晴らしい小説だったとは。。タイミングとか言って、途中で投げ出してしまう人間の気持ちがわからない。笑

主人公のマーコはオースター自身かも

この小説は、マーコ・フォッグという青年の、いわば青春成長物語。語り手はマーコ自身で、思い出を語る回顧録形式。回顧録になっているために、絶望的な物語なんだけども、そこに希望も見出せる。


また、ポールオースターはセルバンデスの『ドン・キホーテ』がお気に入りらしいんだけども(どこかの記事で読んだ)、『ムーンパレス』の中で、マーコもそれが好きだと言っていたり、叔父から譲られた沢山の本を読み漁るという共通点もあったり、ある意味マーコはオースターで、これは自伝的な小説でもあるのかな、と感じたりもする。


登場人物たちもとても魅力的で、皆がマーコに愛情を向ける。オースターのマーコに対する愛情がそのまま、読んでいる僕らにも伝わってくるようだった。僕的には、特に終盤のある場面が印象的で、マーコに対して母性とも言えるような感情(男なのでよく分かってないけども何となく)を抱いてしまった。

偶然が動かす世界

この『ムーンパレス』は、ポールオースター自身の作品の中で「唯一のコメディ」だと本人は言っていて、確かに偶然の出来事が多くある意味喜劇的な感もあって、それも頷けるという気もしないではない
。けれども、世界は偶然によって成り立っているのであって、それはつまり、人は偶然によって生かされているとも言える。そして、登場人物たちのマーコへ向けた愛情を考えると、偶然を生み出すのもまた人であるのかもしれない。そういった意味でこの『ムーンパレス』は、偶然が動かす世界というものが、何も不思議なことではなく、至極真っ当なんだと感じさせられる小説でもあった。



僕は、あまりにも現実離れしたファンタジーやSFってあまり得意ではないんだけども、地面から少しだけ浮いたような、土着感はあるけど幻想的な、そんな微妙な感触の物語が僕は好きであると、改めて確認した。(読んでる人にしたら知ったこっちゃないだろうけども。笑)


まあ結局、読み終えてみて、僕的にもポールオースターといえば(全作は読んでいないけども)コレ、となった。というか、むしろ今まで読んできた中でこの『ムーンパレス』が一番好きな小説かもしれない。そう感じるほど、僕の人生において印象的な小説となった。